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『お医者さんは教えてくれない妊娠・出産の常識ウソ・ホント』 – データ分析によって自分なりの意思決定をサポートする一冊。

情報社会の今だからこそ必要な判断基準

私自身が妊娠して、1番ビックリしたこと。

それは自分の体の変化でした。

 

RIO
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そんな変化に戸惑うたびにググる日々。【医師監修】のワードが付いているサイトでも微妙に内容が異なり、余計混乱することも・・・

 

そんな時に出会ったのが『お医者さんは教えてくれない妊娠・出産の常識ウソ・ホント』(エミリー・オスター著)という一冊。

 

本書の1番の特徴は、医者や助産師ではなくデータ分析のプロが統計学の観点から認識・出産の常識といわれている事柄の信憑性を判断している点にあります。

こんなアナタにおすすめ!

本書は、妊活からお産を終えるまでの過程で抱く疑問や耳にする噂・常識といわれる事柄の真偽を、研究や統計などで得られるデータを分析することで検証しています。

そのため、特に以下の条件に当てはまる方々に特におすすめの一冊。

  • 妊娠中の人
  • これから妊娠したい人
  • 大量の情報から何を基準に判断すべきか分からない人
  • データ分析の視点から、情報を見極めるコツを知りたい人

 

出産〜子育て編は2021年に発売されています。

母乳育児vsミルク、ワーママvs専業主婦などのあらゆる選択肢についても同様に、統計や研究など客観的に裏付けされた根拠をもとに紹介されていて大変興味深い一冊でした。

 

 

本書のあらすじと注意点

 

いま、米国で話題沸騰の最新医学情報!

●妊娠初期の40℃以上のお風呂→無脳症のリスク
●レアの肉、ガーデニング→トキソプラズマ症のリスク
●体重の増えすぎより十分増えない方が問題

データ分析のプロが、信頼できるデータを提示し、知られざるリスクも明らかに!
妊娠しやすくする方法、男女の産み分け、食べたほうがいいもの・食べないほうがいいもの、体重増加に関する情報、つわり、出生前診断、出生前スクリーニング、早産、ハイリスク妊娠、陣痛誘発剤、バースプラン等を徹底分析。
妊娠から出産までの各段階で「気をつけるべきこと」と「悩まなくていいこと」を丁寧に解説します。

Amazon作品紹介ページより引用

 

本書は医学的な正誤ではなく、データ分析の観点から判断基準を示した書籍です。

人は一人一人、生活環境も妊娠・出産に対する考え方も異なります。

そのため、筆者がAと結論付けた事柄が、必ずしもあなたにとっても正解というわけではありません。

あくまでも本書ではちまたで常識とされている事柄について筆者が収集したデータを分析した結果と、それに対する筆者の考え方が示されているに過ぎないため、そのデータと筆者の考えをもとに、あなたはどう考えてどう判断するのか、ということがとても重要になります。

 

RIO
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本に書かれていることを鵜呑みにするのでは、ググった内容を見て悩んでいる今の自分と変わらないですよね。そうではなく、この本は、客観的なデータをベースに、自分の生活や価値観・考え方を踏まえて自ら判断することをサポートしてくれる一冊です。

 

特に印象に残った内容

本書では19章に渡り、妊娠・出産にまつわるウソ・ホントの検証をしていますが、私自身が妊娠生活を送ってきた中で特に印象に残った内容&参考になった情報をここで5点ご紹介します。

妊娠中のカフェイン・アルコールはどの程度許容される?

妊娠が分かった後に検索して一番多く見かけた情報は、カフェインは若干量はOK、アルコールはNGというもの。

ただ、欧米の妊婦さんは適正範囲内でカフェイン・アルコールを日常的に摂取しているので、アルコールが直ちに胎児に悪影響を与えるとも言い難いのかもしれません。

 

本書では下記のような統計を基に、妊娠中の軽いカフェインやアルコールの摂取が胎児に悪影響を与えることはない、と結論づけています。

 

  • 妊娠中の飲酒量は、問題行動のある2歳児の割合と関係性はない。
  • コーヒーの摂取量と流産の確率に関係性はない。
  • 妊娠中にカフェイン入りコーヒーを飲んでいた妊婦の新生児と、カフェインレスコーヒーを飲んでいた妊婦の新生児の出生時の体重・身長・妊娠日数・頭囲に差はない。

 

RIO
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これらを踏まえ、私自身としてはお酒大好きだけど我慢できるし我慢しようと決意。一方で、産休入りまで仕事を続けるつもりだったこともあり、カフェインを含むコーヒーやお茶を一切断つことは難しい・・・ということで、飲みたい時は1日1杯までを上限にOKと判断しました。

 

厚生労働省のウェブサイトでは、妊婦のカフェイン摂取量について、WHO(世界保健機関)のガイダンス(下記)を掲載しています。

 

2001(平成13)年に公表した「Healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding (BookletFor Mothers)2001」において、「紅茶、ココア、コーラ飲料は、ほぼ同程度のカフェインを含み、コーヒーにはこれらの約2倍のカフェインが含まれている。このため、カフェインの胎児への影響についてはまだ確定していないが、妊婦はコーヒーの摂取量を一日3~4杯までにすべき」とされています。

 

積極的に食べるべきもの、避けた方が良い食材

妊婦さんが避けた方が良いとされるメニューとして有名なのは、寿司・生ハム・チーズ・搾りたての牛乳でしょうか。

「本当に?少しくらい大丈夫だよね?」

なんて思っても、「旅行先の牧場でうっかり飲んだ搾りたて牛乳が原因で流産しました」っていう実体験を見てしまうと、怖くて手が出せなくなる・・・

 

殺菌されていない牛乳やチーズ、生ハム類に含まれているリステリア菌は、感染すると胎児に与える影響が深刻。感染した場合、流産や早産、出生後も髄膜炎・神経障害などが起こる可能性が非常に高いそう。

 

RIO
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寿司など生魚はサルモネラ菌という別の菌が原因となり、リステリア菌ほど神経質になる必要はないということで妊娠している友人はお寿司をたまに食べたりするそうですが、私は出産までは寿司含めてこれらの食材は我慢しようと決意。

 

厚生労働省のウェブサイトでも、特に妊婦さんと高齢者は注意が必要だと呼びかけています。

(参考)リステリアによる食中毒

 

一方、積極的に摂取すべき食材として魚が挙げられています。

魚を摂取する場合水銀に気をつけなければなりませんが、以下の魚は摂取すべきDHAの含有量が多い反面避けるべき水銀のリスクが低く、私も妊娠期間中積極的に摂取するよう心がけていました。

 

  • サケ
  • ニシン、イワシ
  • サバ

 

普段の食卓にも馴染みのある魚ばかり。

最近はこれらの魚を使った調理済みの惣菜などもスーパーで簡単に買えますし、仕事帰りでヘトヘトでも手軽に夕飯のメニューに追加できます。

妊娠後期(特に臨月)に運動は必要?

妊娠後期、特に臨月になると産院で「毎日1時間、ウォーキングをがんばりましょう!」とよく看護師さんに言われるようになります。

 

実際に私も色々と検索をして、ウォーキングのメリットとして

  1. お産を促すこと
  2. 体重増加を抑制すること、

を挙げて推奨するウェブサイトをたくさん見かけました。

 

実際のところ、妊娠期間中の運動が何らかのメリットをもたらすというエビデンスは現時点では存在しないそう。一方で、運動することのデメリットもないことから、無理のない範囲で体調や気分の優れるときに運動をする、というのが最善の回答に思われます。

 

ただし、

  • 腹筋
  • 激しい運動

は妊娠中にすべきではないという調査結果が存在することから、避けるべきだと述べられています(妊娠中にこれらをしなければならない人はかなり限定的だとは思いますが・・・)

仰向けで寝てはいけないの?

お腹が大きくなるにつれて、うつ伏せで寝ることが難しくなることは予想していましたが、仰向けもNGだとされています。

理由として、特に子宮が大きくなる妊娠中期〜妊娠後期には仰向けで寝ることによって重要な血管を圧迫し、母体から胎盤や赤ちゃんへの血液の供給が減る、というものです。

 

ただし、仰向け寝によって妊婦さん自身の気分が悪くなることはあっても、胎児に何らかの悪影響を及ぼすという結果は確認されなかったという研究が存在することから、例えば寝ている間に無意識に仰向けになってしまったようなケースを過剰に心配する必要は無さそうです。

 

一方で近年の研究結果として、仰向け寝をする妊婦・右側を下にして寝る妊婦と、左を下にして寝る妊婦との死産の割合を比較すると、前者は後者の2倍という非常に高い数字だったというものがあります。

この研究は完璧ではないものの、明らかな欠陥があるわけでもないことから、完全に無視することのできない説だと本書にも記載されています。

 

RIO
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現時点では寝る時の体勢を神経質になって気にする必要はなさそうですが、仰向け寝・右側を下にして寝るリスクを示唆する研究の存在が明らかになったので、例えばベッドで横になるときの姿勢とか、できる範囲で注意すると良いかもしれません。

予定日は目前、いつ産まれるのか予想したい!

妊娠37週に入ると、いつ赤ちゃんが産まれても良い時期になります。

そのため私もその頃には「いつかな?まだかな?」と毎日ソワソワしていました(笑)

早く赤ちゃんに会いたいと思う反面、出産のリアリティが増して一気に不安になり、とても複雑な気持ちに。

 

でも検診のたびに先生に「うーん、まだまだかなぁ」と言われ、いつの間にか現実味を帯びてきた出産がまた遠ざかり・・・暇さえあれば「出産 週数」などと検索して、我が子はいつ産まれてくるのか思いめぐらせています。

 

こんな時にも客観的なデータがあると予想しやすくなりますよね。

いくつか統計データが掲載されていましたが、特に興味深かったのはこちら。

 

【今週中にママになる確率は?】

本書245ページより引用

 

RIO
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この表を見て、37週くらいでまだかなまだかなと神経質になる必要はないんだな、と少し冷静になりました(笑)

 

お産の始まりは、必ずしもデータ分析が当てになるとも限らないことは筆者も以下のとおり指摘しています。赤ちゃんの準備が出来れば自然と産まれてくるだろう、と心の余裕を持って待ちたいですね。

(略)子宮頸部に何の兆候も見られなかったのに、陣痛が始まる女性はたくさんいる。逆に私の義理の妹は、2人目を妊娠したとき子宮口が3センチ空いてから陣痛が始まるまで何週間もあった。医者は「今週末には産まれますよ」と言い続けたが、空手形に終わった。彼女の場合、子宮頸管の状態はまったく参考にならなかったが、こうした例はめずらしくない。

本書246ページより引用

まとめ

妊婦検診の際に、お医者さんや助産師さんなどから気軽に医学的なアドバイスをもらうことができますが、本書のように統計・研究・実験で得られるデータも有力な判断材料になります。

私自身、妊娠中に気になっていたことやお医者さんに聞くほどでもないなぁと思っていたことについて、本書を一読することで自分なりの考えや意見を持つことができたと思います。