お金

『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』

これまで投資や資産形成の知識やテクニックに関する本は、たくさん読んで学んだ自負があります。

本書はそうした書籍とは一線を画し、お金と上手に付き合うためのマインドセットにフォーカスを当てており、「お金についてきちんと知っている」「投資テクニックを理解している」と根拠のない変な自信を持ってしまっていた自分自身に、深く刺さる内容でした。

 

RIO
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いつか娘に読んでほしい本。自信を持って「良い本だよ」とおすすめできる内容でした!

 

『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』

モーガン・ハウセル著(児島修訳)

世界が絶賛! 超話題のマネー本がついに上陸。破産した大富豪と9億円もの資産を築いた地味な清掃員。2人にあった違いとは? 資産を築けない人の特徴、そしてお金を手にし続けるために大切なマインドセットを紹介する一冊。もうこれで、一生お金に困らない!(Amazon作品紹介ページより引用)

 

 

常識にとらわれない

 

私たちは、時に自分の常識で物事や他人をジャッジして、安易に他者の言動を「愚かだ」「間違っている」などと批判しがちです。

ですが本書では、過ごした時期や地域が少し異なるだけで、一人一人が抱える「常識」というのは、まったく異なる、と指摘しています。

 

例えば、宝くじ

基本的に宝くじの購入者は損する仕組みで、大多数の人が負けるゲームなのに大金を注ぎ込む人が多く、しかも大半はいわゆる貧困層の人だと言われています。

私自身も、「資産を増やす目的で宝くじを買うなんて、マネーリテラシーがないな」と非難めいた発言をしたことがあります。

ですが実際にはそんな簡単に片づけられることではなく、長い人生貧困で苦しんできた歴史があり、負け戦だと分かっていたとしても一発逆転に賭け、本気で当選金を狙いたいと願うほど苦労してきた人がいるという事実をしっかりと知り、そういう人たちの気持ちを無視して安易に何が正しいかを押し付けるのは良くないことだと反省しました…

 

 

また、成功例であれ失敗例であれ、運に影響されている部分は大きい、という点も指摘されていました。世界一有名な投資家と言っても過言ではないバフェットも、実力だけであれほどの富を築いたというわけではなく、本人も想定していなかった偶然や幸運が味方した部分も大きいと指摘されています。

 

そうした偶然や運を考慮せず、成功や失敗の結果のみに着目してその人の言うことを全て信じるべきではない、と言及されていました。特に事業で成功したり投資で大きく資産を増やしている人に対して私たちは盲目的に信じてしまう傾向にあります。もちろんその人たちの主張の中には正しいことや参考になる情報も多いですが、必ず自分の頭で情報を吟味して調べてから自分の知識にすべきですね。

 

複利の魔法

 

資産形成の書籍で語られないことのないほどの基本的で大切な複利

この本でも例に漏れず、資産形成における複利の重要性を分かりやすく説明してくれていました。

 

バフェットは類まれな投資家である。しかし、その成功のすべてを「投資の才覚があったから」という一言で片づけてしまうと、重要なポイントを見逃してしまう。バフェットの成功を読み解く真の鍵は、彼が4分の3世紀にわたって類まれな投資家であり続けたことにあるのだ。(P78)

 

成功した結果だけに着目すべきではない、ということは前述の通りですが、成功の裏には運や偶然に加え、この複利の力というのがかなり効いてきます。

詳細は割愛しますが、本書執筆の時点でバフェットの資産は845億ドルという途方もない金額と言われている内の815億ドルは、彼が60代半ば以降に増やした金額とのこと。

 

 

財務諸表を読み解く力といった投資のテクニックはなくとも、とにかく長期間株式投資を諦めずに保有し続けること

複利の恩恵を受けること

バフェットの成功から、改めてその大切さを学びました。

 

裕福になることVS 裕福であり続けること

 

私は、裕福になることを目標にして資産形成を頑張っていました。

ですが裕福になった者が裕福であり続けることがとても難しいことを、本書を読んで初めて学びました。

 

RIO
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正直、一度裕福になれば、当然裕福なまま過ごせるのだと思っていました…

 

信じられないほどの大金を手にしたものの、ほんの数年で使い果たして借金まで重ねて破滅するケースは、珍しくないそうです。一度大金を手にして生活水準や金遣いが変わってしまうと、元の生活に戻すのが難しいことは想像に難くありません。

 

 

破滅を避けるための心得として述べられていたのは、以下の3つ。

  1. 大きなリターンを得ることよりも、経済的に破綻しないことを目指す
  2. 計画通りに進まない可能性を踏まえて計画する
  3. 未来に楽観的であれ(=たとえ途中で不運に見舞われたとしても、長期的に見れば物事は自分が望む方向に進むと信じること)

 

特に順調に資産を伸ばしていると、少し気が乗ってリスクテイクしてもっとお金を増やしたくなる場面も多々あると思いますが、この心得を常に念頭におきながらお金と向き合っていきたいです。

 

お金を稼ぐことの本当の意義=自由に使える時間を手に入れること

 

なぜ私たちはお金を増やしたがるのでしょうか。

高級車に乗ることや、高級時計を身につけることがその理由という人は、少数派でしょう。

お金を増やすことの意義についての本書での記載にとても共感したので、引用します。

(略)どんなに高い給料よりも、どんなに大きな家よりも、どんなにステータスのある仕事よりも、「好きなときに、好きな人と、好きなことができる」生活を送れるほうが、人を幸せにするのである

そして、お金が私たちにもたらす最大の価値がそれだ。お金は、自分の時間をコントロールできるようにしてくれる。(P127)

 

少し前からよく目にするFIRE(経済的に自立し、早期に引退する)を目指す人も、まさにこれを目標としているのではないでしょうか。

 

 

今という時間は、後から取り戻せません。

子供が小さいうち、ペットたちが元気なうち…

そういう大切な時を、大切な人と思う存分満喫するためにはやはり、安心して生活していけるだけのお金が必要です。

 

そしてそのためのお金であれば、リスクテイクして大きく資産を増やす必要はなく、必要な金額を安全な運用方法で管理していけばよい、という考えになります。

 

甘い話には絶対乗らない

 

この記事を書いている現在(2022年7月下旬)、有名なお笑い芸人さんが投資に関するトラブルに巻き込まれて事務所を退社、というニュースが世間を騒がせています。

 

お金にまつわるこうしたトラブルは、なぜ後を絶たないのでしょうか。

 

(略)重要な何かを守ろうとするとき、人は何でも信じようとする。

お金の場合も同じだ。

たとえば、私たちはめったに当たることのないテレビの投資番組の予想に耳を傾けてしまう。これは勝つ確率の低い賭けになるだろう。だが投資番組の視聴者は、その事実を直視できないし、しようともしない。自分が真実であってほしいことを、間違いなく真実だと信じ込もうとする ー 単に大きなリターンが得られるかもしれないという理由だけで。(P281)

 

自分の願望と同じことを言う人を、信じたくなってしまう。信じてしまう。

 

「元本割れしない。」

「普通に投資するより儲かる。」

 

 

投資詐欺ではないですが、私も過去に少し痛い目に遭いました。

投資の勉強のために株式投資の雑誌を読んでいた際、「多数の上場企業中で、絶対に次に来るのはこの銘柄だ!」と袋とじで紹介されていた銘柄を、その言葉だけで購入しました。

結果的に、1年ほど保有していましたが一度も購入金額より上がることはなく、自分でもその会社の株式を持ち続ける意味が分からなくなり、損切りして手放すことになりました。

 

保有していた1年ほどの間、「あの有名な●●さんが、わざわざ立ち読みでも分からないような形で紹介していた銘柄だから、絶対上がるはず!!」と、今思えば何の根拠もないのに頑なに信じていました。。。

 

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投資のテクニックや知識ももちろん大事ですが、どのような心構えで投資をするのかということの大切さは、本書を読むまで見落としていました。

 

この記事では紹介しきれませんでしたが、他にも多くの金言が詰まった一冊でした。

  • 「十分(Enough)」という感覚を持ち続けること
  • 運とリスクを理解すること
  • 臨機応変でいること

 

本書の後半では、医師と投資アドバイザーが本質的に似た職種であり、その人にとっての正しい助言というのは他人が完全に与えられるものではなく、自分で最終的に考え判断する必要があるという趣旨の内容が述べられていました。

 

家族の大切なお金をしっかりと守れるよう、他人に頼りすぎず、また頼りになる自分自身になれるように過ごしていきたいです。